子供の体力の現状と その課題
平成23年度 第1回東京都生涯スポーツ担当者研修会
*平成23年7月2日14時00分~16時00分
*東京都庁 都議会議事堂「都民ホール」
*順天堂大学スポーツ健康科学部 教授 内藤 久士氏
*子どもの体力・・・日本だけではなく世界でも関心が高い
「アクティブ チャイルド プログラム」・・・子どもの発達段階に応じた運動プログラム
・昔活発に動いていた子どもが活発でなくなった→もう一度活発さを取り戻そう!
1.子どもの身体活動の意義
2.基礎的動きを身につけることの重要性
3.遊びプログラム
4.場・しかけの重要性
「体を動かさないとどうなるの?」DVD鑑賞
ペープサート形式で、体を動かさないと、体力が低下して身体的な問題のみならず、
精神的にも問題があり、社会的にも悪影響だということなど、体を動かすことの大切さ、
楽しさを子どもに伝わり易く、興味を持たせるような内容でした。
1日60分は体を動かすことを目標とし、毎日の生活の中で、スポーツじゃなくても、
遊んだり、階段を使ったり、お手伝いなど、体を動かすことに繋がっていて、
そんなに難しくはないんだということでした。
* 現在では、1週間の総運動量が60分未満の子どもが増えている
(男子の10%、女子の20%)
* 体力テストの成績の分布から今と昔(親世代)を比較すると昔より平均値の山が低く、
成績も低くなっている。
・・・運動している子どもの成績は高くなっているが、運動していない子どもが
多くなり平均値を下げている(子どもの体力の二極化)
*立ち幅跳びは運動している子どもでも低下傾向
・・・タイミング・腕の振り・角度・着地など複合的な動作が必要
↓
小さい時に遊びで身につけていた全身操作が今の子どもは出来ていないことがわかる
*東京など都市部の子どもの運動不足が問題になっていたが、今は過疎地域の方が
運動しない子どもが多くなっている''・・・地域的問題
*子どもの体力低下の原因
① 身体活動の必要性の減少・・・エスカレーター・エレベーター・家電製品の発達
② 車社会の加速・・・安全面や時間的効率を重視
③ 知育偏重に伴う運動時間の減少・・・塾や習い事で忙しい
④ 少子化・・・全身運動の激減
⑤ 遊びの多様化・・・娯楽性の高い携帯ゲームなどの出現
*体力低下に関わる3つの間・・・空間・時間・仲間
・自由に遊べる空間がない
・安心して遊べる空間がない
・友達と遊べる時間があわない
・一緒に遊べる仲間がいない(兄弟の減少)
*生活習慣は連鎖する
➚ 夜更かしをする ➘
➚ カウチポテト・ゲーム・テレビ 朝起きられない ➘
体を動かさない 悪循環 朝ごはんが食べられない
・食べない
↖ 集中できない 排便しない ↙
↖ 体がだるい ↙
➚ ぐっすり寝る ➘
➚ 夜ごはんしっかり食べる 朝早起き ➘
おなかがすく 早寝早起き 朝ごはんしっかり食べる
↖ しっかり運動・遊ぶ 体も目覚める ↙
↖ 集中して勉強する ↙
≪生活のリズムを作るのに運動は欠かせない≫
*成果を支える最低限の基準の設定
・体を使った遊び、生活活動、体育・スポーツを含めて毎日最低60分以上体を動かしましょう
→肥満・メンタルヘルス・健康関連体力・不定愁訴・社会性などさまざまな問題の解決に…
・子どもたち自身が体を動かすことの重要性を認識することも必要
→大人が言うだけでは無理・歯磨き同様の習慣づけも・・・
*動きの質(できばえ)を観察評価することの意味
・指導者は基礎的動きを身につけることの重要性を理解して指導に取り組む必要がある
・跳ぶ動作の評価から、現在の4年生の能力が20年前の年長に相当することがわかった
→体を上手く操作出来ない子どもが増えている
↳小さい頃の外遊び(木登りなど)の経験で育つ
・今の子どもたちはスポーツをするのに必要な根本の動きが出来ていない
・量的な評価(どれだけできるか)だけでなく質的な評価(どのように出来るか)も必要
*動きの質のとらえ方
・量的な成績にとらわれず、出来栄えの良しあしを観察・評価して指導に生かす
→子どもの動き方(質)をしっかり観察して、一連の動きの中で足りないものを
補うような指導方法の工夫も必要
↳ ある動作に伴う体の各部分の動きのポイントを上手くつかんで動いているか
・走る:力強く地面を蹴る・前方にスムーズに進んでいる
腿が良く上がっている・歩幅が大きい
腕は適度に曲がり、前後に大きく振られている
・跳ぶ:両足で前方に力強く跳躍している
膝と腰をよく曲げて、跳ぶ準備をしている
腕を後方から前方にタイミング良く振っている
離地時に体全体を大きく前傾している
両足で体の前方に着地している
・投げる:全身を使って力強くボールを投げている
ステップ脚(投げ腕と反対側)が前に出る
上半身をひねって、投げ腕を後方に引いている
軸足からステップ脚に体重が移動している
腕を鞭のように振っている
・・・・など
*遊びのプログラム
・特別にスポーツをやる必要はない・・・昔遊びの伝承もよい
・身体を使った遊びは基本的な体力や動きの発達、人間関係やコミュニケーション能力の
発達など、子どもの心身の発達に効果的
・さまざまな機会をとらえて子どもに伝え、子どもと一緒に遊ぶ機会を設けることが大切
*場・しかけの重要性
・子どもが体を動かしたくなる「場・しかけ(働きかけ)」が必要・・・大人の役割
・身体活動・運動の習慣化を促すアプローチ・・・学校・家庭・地域
学校…土日・長期休業などで、今の子どもたちは一年の半分くらいしか学校に行っていない
家庭・地域…生涯スポーツという意味ではこちらが大切
学校とも連携を取りながら親や地域の指導者等の働きかけが大事
・ターゲットはスポーツクラブなどに入っていない子どもたち
→ 運動が嫌いだと思われがちだが、実はこの子どもたちのうち7割近くは運動が好き・
5割は運動したいというデータがある
しかし!時間がない・親が勉強を優先させるなどの問題が・・・
・家庭(保護者)の理解と協力が重要なカギ
知性は身体と心と密接に係わっている事を強調していかねば!
・身体を動かす → ライフスタイルを上手く動かす → 成績向上
筋肉・感覚器 → →脊髄を刺激→ → 大脳:運動の指令・知性・心・人間らしさ
➘ 小脳:運動の学習・巧みな動き
・運動の習慣化は家庭から
→ スポーツに関心のある家庭の子どもは体力が高い
*習慣化を促すには・・・学校・地域・家庭の働きかけが必要
①根気よく取り組む → 意図・目的・対象者を明確に
②学校から地域へ→ スポーツクラブなどの育成
③1時間/日 の運動→ 生活の中での運動
特定のスポーツではなく、遊びや、手伝いなど身体を
動かすこと全般を運動としてとらえることが大切
・教員希望の大学生を利用して、遊びのアプローチをしているところもある
・「行動実践に対する励ましや賞賛」「適切な場所の提供」「一緒に体を動かす」
「お手本を見せる」等、大人のサポートが効果的